この人の本は、なんだかんだいって結構読んできた。でも、本書のようなホラー要素のない本は初めて
でもあり、期待と不安の入り混じった複雑な心境で読み出したのだが、これが結構読ませるのである。
でも筋書きは、まんまVシネだった。リアルに怖いゴクドーさんたちが登場して、地方のなんともいえ
ない場末的な雰囲気の中で熱い熱いシノギを削っていくのである。
しかしこれが読ませる。ほんと、このチープな話がおもしろいのだ。
まず主人公である甘ちゃん大学生の亮がホント馬鹿。でもって自分からどんどん窮地に陥ってしまう。
これがある種の快感だった。オビで北上次郎が書いているのはそのことだろう。どんどんエスカレート
していって、どんどんヤバイことになっていく。
ほんの出来心でした大麻の盗みが、やがて組同士の抗争に発展していってどんどん人が死んでいくので
ある。う~ん、いま気づいたが、さっきから『どんどん』ばかり使ってるぞ^^。エスカレートしてい
く様を強調したかったのだ。
とにかく本書はそういう風にラストに向けて風向きが悪くなる一方なのだ。
ラスト自体はちょっと肩透かしの感が無きにしも非ずなのだが、それは目を瞑ることにしよう。
登場人物に目を向けると、ゴクドーのみなさんも任侠を重んじる方々と、ハイテクを駆使した事業展開で
のさばっているインテリで冷酷な方々という風に非常にわかりやすい構図で色分けされており感情がブレ
ることなく物語に没入できたし、こういう話にありがちな濡れ場が多いというワンパターンの戦法がなか
ったのも良かった。
というわけで、チープな話だったのにも関わらず結構楽しんだ。やっぱりこの人好きだなぁ。