読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

喜国雅彦「本棚探偵の冒険」

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 本好き、それも古本に目が無い人にとって本書の登場はまさしく垂涎ものの喜びだったに違いない。

 

 少なくとも、ぼくはそうだった。まったく、ほんとうに、鼻息荒く興奮した。

 

 喜国雅彦の存在は本書を読む以前からよく知っていた。しかし、このルーズソックスばかり描いている煩悩の貴公子が、よもやこれほどの古本マニアだとは知らなかった。

 

 まさに本書は古本を愛する者による愛すべき本である。

 

 ページを開けば、のっけからして、もうマニアの心をくすぐりまくる内容だった。

 

 タイトルは「夢の蔵」。

 

 これは、全国の古本マニア及びミステリマニアが聖地と崇める、乱歩邸の膨大な蔵書を収めた蔵を喜国一行が見学するという興奮ものの一幕。山口雅也京極夏彦という一行のメンバーからして尋常じゃないのだが、乱歩が蒐集したお宝を目にした一行の興奮ぶりはさらに尋常ではなかった。みな脳内麻薬が出まくりで半分トリップ状態。山口氏は洋書コーナー、京極氏は和本コーナー、喜国氏は少年ものとそれぞれお気に入りの場所で桃源郷をさまよっている始末。

 

 う~ん、うらやましい。ぼくも死ぬまでに一度は見に行きたいものだ。

 

 こうして、いきなりガップリと心をつかまれたぼくは、むさぼるように本書を読んだというわけだ。

 

 内容は、素晴らしいの一言につきる。興味尽きない話題が次から次へと繰り出されてくる。我孫子武丸氏の越したばかりの新居に行って、ダンボール箱三十個分の本を本棚に整理する「他人家の本棚」。角川の横溝正史本八十九冊コンプリートを目指す「黒背表紙を求めて」。自分で本の函を作ってしまう「函を作る」。早川のポケットミステリを当時の最新巻1620番まで集めようという壮大な計画の「ポケミスラソン」等など、ほんと読んでて飽きることがなかった。この喜国氏の古本にたいするマニアぶりは凄まじいものだった。

 

 はっきりいって、本書には麻薬に似た効能がある。どうしても感化されてしまう。気持ちが鼓舞され、熱に浮かされたようになってしまうのだ。それほど古本にたいする情熱が横溢している本なのだ。

 

 いやあ、ホントに楽しい本なのである。それが証拠に今この記事を書こうと思ってパラパラこの本を見てたら、思わず読み耽ってしまったくらいなのだ。

 

 そんな古本に情熱を燃やす喜国氏は本書の体裁にもこだわりをみせている。もちろん函付きだし、凝ったオビもついてるし、喜国古本コレクションやシンポ教授の特別寄稿が載っている月報も挟んであり、

 

 さらに初版本に限り著者検印がついているのである。

 

 因みに検印はこんなやつ。
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 ほんと、マニア心をくすぐるねえ(笑)。