以前、平山夢明のノンフィクションは読む気がしないと書いていたが、本書だけは別である。
この本をひらけば、およそこの世のこととはおもえない地獄絵図が現出する。
あとがきでも述べられてるが、本書を編集したスタッフの一人は、作業を一気に行ったため一週間あま
り体調を崩してしまったそうだ。また、アメリカ人のスタッフの一人は、資料を収集している最中に情
緒不安定になってしまったそうである。
それほどまでに本書の発する瘴気は凄まじいのだ。
ここで描かれるのは七人のシリアルキラーたちの地獄の所業である。顔ぶれは以下のとおり。
・人体標本を作る男 エドワード・ゲイン。
・殺人狂のサンタクロース アルバート・フィッシュ
・厳戒棟の特別捜査官 ヘンリー・リー・ルーカス
・ロチェスターの殺人鬼 アーサー・シャウクロス
・赤い切り裂き魔 アンドレイ・チカチロ
・少年を愛した殺人ピエロ ジョン・ウェイン・ゲーシー
・人肉を主食とした美青年 ジェフリー・ダーマー
まあ、この中の大半は一度は名をきいたことがある有名人だ。
ゲインは「サイコ」のモデルになったことでも有名だし、ルーカスもレクター博士のモデルとして名高
い。ゲーシーはキングの「IT」に登場しているし、ダーマーは、ミステリファンなら大方の人が知っ
ていることだろう。しかし、そんな人でも彼らがどういう生い立ちを経て、どんな殺人を犯したのかと
いう詳細を知る人は少ないと思う。どうか心して読んでほしい。
本書を読んで特に印象に残ったのは、それぞれの殺人者の幼少時代のエピソードだ。彼らは皆幼少時代
にひどい虐待を受けているのである。
虐待=シリアルキラーなんていう短絡的な関連性を信じるつもりはないが人格形成の上で、いかに幼少
時代の経験が大事なものかがわかった。
その他の部分では、やはり彼らが起こした犯罪の異常性である。死体損壊など当たりまえで被害者を食
べる行為が多いことに衝撃を受けた。どうしても同じ人間の所業とは思えない。
これらの異常な犯罪にも独創性というものは存在していて、七人が七人とも己がオリジナルともいうべ
きスタイルを確立していることがさらに驚きに拍車をかける。
それにしても、ここまでいってしまったら、ある意味神に近い領域に踏み込んでいるのかもしれない。
そう思えてくるほどに、ページを追うごとに非現実感が高まってくる。
なるほど、これを一気に消化したら脳がクラッシュするかもしれないなと思った。
もし、興味をもたれてこの危険な本を読もうと思われた方がいたら注意していただきたい。身体及び精
神に変調をきたすおそれが多分にあることを考慮して、読むことをオススメする。