物語の切り口が新鮮だ。
冤罪裁判の判決が出てから動きはじめる物語なんて、いわばクライマックスが済んでしまってるみたいなものだ。いったい、この後どう話が続いていくのだろうと興味津々だった。
これは皮肉な話だ。良い結果がすべてを悪い方向に導いている。しかし、読後感は悪くない。むしろさっぱりしている。これも主人公のマリ-エレーヌに負うところが大きいのかもしれない。彼女は感情的でありながらクールで、容姿もきれいだが華がなく、清廉潔白な潔さがないのに、変に真面目なのである。およそ共感するにはほど遠い人物。彼女のおかげで読者は物語の方向を見失わず、我を忘れることもない。
他の登場人物の対比も明確で、明暗くっきり、静動はっきりでわかりやすいことこの上なしだった。薄い本ながら、おもしろくまた残るものがある。
トロワイヤの実力をあらためて実感した。