柴田よしきの作品はいままで読んだことがない。特に理由はないのだが、なんとなくそうなってしまっ
た。ぼくはいまだに柴田よしきと及南アサを混同してしまうところがあって、これではいかんと思い読
んでみた。
本書は柴田よしきのデビュー作であり、第十五回横溝正史賞受賞作である。
最初に断っておくが、これはちょっと好みではない。男性の目線で見てるからかもしれないが、どうも
主人公の緑子が好きになれない。キャラクター造型に稚拙さを感じた。強いんだか、弱いんだかよくわ
からない。性に奔放で、打たれてもへこたれないところなどには強さを感じるが、感傷的なモノローグ
などを読んでるとヘタなメロドラマみたいな陳腐な印象を受ける。これはスタイルの問題だと思うが、
異様に行間を空ける文章も陳腐さに拍車をかけた。
とまあ、そういう部分が妙に引っかかったのである。だからかどうかはわからないが、ミステリ部分で
もあまり感心しなかった。警察小説ゆえ本格的な謎解きなどはないのだがミステリとしての『謎』はあ
るわけで、本書ではそれが動機及び関係者を結ぶ線(ミッシング・リンク)の謎として提示される。
意外な犯人も用意されているが、これもちょっと弱い。そうなってくると、謎の解明部分もしっくりこ
ない。でも、これで見限ろうとは思っていないのも事実。
主人公に魅力も感じず、ミステリ的にも惨敗となると二作目以降は読む気もしないのだが、本書にかぎ
ってそういうことは思わない。シリーズ三作目まで読んでみようと思っている。とりあえず本書は小手
調べ。解説でも書かれているが、ニ作目以降はプロットも錯綜して読み応えがあるようだ。
緑子に感情移入できるかどうかはわからないが、とりあえず読んでみよう。
願わくば、本書以降の作品はもっともっと好きになれますように。