本書はなんとも暗くて重い内容だ。
なのに本書の主人公は11歳の少女なのである。だから、彼女の眼を通して語られる世界は空想に侵蝕されて、暗くて厳しい現実がボカされてしまう。両親は薬中で、若い母親はそれが元で死んでしまう。
父と娘は母を置き去りにして、テキサスの田舎の今は誰も住んでいない実家に逃げるようにして帰ってくる。でも、父親の方もその日のうちに椅子に座ったまま死んでしまう。少女は、父の死を受け入れず眠っているのだと思って日々を過ごす。話相手は、ガレッジセールで手に入れた幾つかのバービー人形の首。彼女とバービーちゃんとの冒険に満ちた日々。静かに腐っていく父親。やがて、少し離れたところに住む少し変わった住人が現れて・・・・。という感じなのだが、少女の内面がシビアなのに子ども特有の奇妙な論理に満ちているため、深刻な状況がそうならずに童話的な残酷さに終始している。
少し弱いのだが、なかなか読ませた。次作に期待したいと思う。