太陽系、金星の小惑星で千隻あまりのスペースシップが発見される。しかし、そこにはそれらを使っていた者の痕跡は何も残ってなかった。人類はその者たちをヒーチ-人と名づけ、手がかりなしにスペースシップの操縦法を模索する。やがて試行錯誤のすえ、なんとか人類はスペースシップを動かすことに成功。しかしそれに乗って出発することは、どこかの惑星に辿りついて何かを発見し億万長者となるか、もしくは死して帰還するかのイチかバチかの賭けでもあった。
かくしてゲイトウェイ(スペースシップ発着場)は、一攫千金を夢見る者であふれかえることになる。
本書の主人公もまたそんな男達の一人。ひょんなことから一攫千金を狙う元手を儲けた彼は、大いに悩んだすえスペースシップに乗り込み、宇宙への目的もわからぬ旅に出る。
これは、おもしろかった。この本はとにかく読みやすい。SFに身構えてる人でも難なくその物語世界に入っていける。そして特筆すべきは、本書の主人公がこういったスペース・オペラにありがちなヒーローに描かれているのではなく、心に傷を負ったアンチ・ヒーローとして描かれている点だろう。
彼は、賭けに勝った。イチかバチかの賭けに勝って巨万の富を手に入れた。しかし帰還後、彼は精神科医のもとを訪ねることになる。本書はそんな彼と精神科医の対話のパートと、彼がゲイトウェイからの旅立ちによって成功するまでの物語が交互に語られることになる。
心に傷を負ったがゆえに、そして人間としての弱みをみせるがゆえに彼はヒーローになりえてない。
むしろ、痛々しい。しかし、それでも本書はおもしろい。人間的な弱さをみせられることによって、物語に真実味が加わるのだ。
本書はシリーズ化されている。巻をおうごとに謎に包まれたヒーチー人の全貌が明らかにされるようである。あいにくぼくは本書しか読んでいないのだが、追々続きも読んでいきたいと思っている。
とりもなおさず、SFの各賞を総ナメにした本書は著者フレデリック・ポールの代表作であり、SFを語る上ではずすことのできない傑作なのは間違いない。
オススメです。