読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

フレデリック・ポール「ゲイトウェイ」

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太陽系、金星の小惑星で千隻あまりのスペースシップが発見される。しかし、そこにはそれらを使って

いた者の痕跡は何も残ってなかった。人類はその者たちをヒーチ-人と名づけ、手がかりなしにスペー

スシップの操縦法を模索する。やがて試行錯誤のすえ、なんとか人類はスペースシップを動かすことに

成功。しかしそれに乗って出発することは、どこかの惑星に辿りついて何かを発見し億万長者となるか

、もしくは死して帰還するかのイチかバチかの賭けでもあった。

かくしてゲイトウェイ(スペースシップ発着場)は、一攫千金を夢見る者であふれかえることになる。

本書の主人公もまたそんな男達の一人。ひょんなことから一攫千金を狙う元手を儲けた彼は、大いに悩

んだすえスペースシップに乗り込み、宇宙への目的もわからぬ旅に出る。

これは、おもしろかった。この本はとにかく読みやすい。SFに身構えてる人でも難なくその物語世界

に入っていける。そして特筆すべきは、本書の主人公がこういったスペース・オペラにありがちなヒー

ローに描かれているのではなく、心に傷を負ったアンチ・ヒーローとして描かれている点だろう。

彼は、賭けに勝った。イチかバチかの賭けに勝って巨万の富を手に入れた。しかし帰還後、彼は精神科

医のもとを訪ねることになる。本書はそんな彼と精神科医の対話のパートと、彼がゲイトウェイからの旅

立ちによって成功するまでの物語が交互に語られることになる。

心に傷を負ったがゆえに、そして人間としての弱みをみせるがゆえに彼はヒーローになりえてない。

むしろ、痛々しい。しかし、それでも本書はおもしろい。人間的な弱さをみせられることによって、物

語に真実味が加わるのだ。

本書はシリーズ化されている。巻をおうごとに謎に包まれたヒーチー人の全貌が明らかにされるようで

ある。あいにくぼくは本書しか読んでいないのだが、追々続きも読んでいきたいと思っている。

とりもなおさず、SFの各賞を総ナメにした本書は著者フレデリック・ポールの代表作であり、SFを

語る上ではずすことのできない傑作なのは間違いない。

オススメです。