読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

君が忘れていったもの

片付け上手な君が

たったひとつ忘れているもの

歯を磨きながらしゃべったり

人の話を聞かなかったり

寝ているときに大きな寝言でびっくりさせたり

いろんなことで笑わせてくれる君だけど

部屋の掃除だけはきちんとしていた君

そんな君が忘れていったもの

それは

ぼくがプレゼントしたサーペントの指輪でもなく

二人でよく行ったスキーの思い出でもなく

ぼくと君が映ってる写真でもなかった

君が忘れていったのは

小さな夢だった

ささやかで、夢ともいえないような小さな夢

でも、その夢を君と語り合っている時間が好きだった

努力しなくても実現できそうな夢だったのに

とうとうその夢は実現できなかった

君が忘れていった二人の夢

君の笑顔を忘れたい

君の匂いを忘れたい

君の温もりを忘れたい

卵のように眠りたい

いつまでも、いつまでも