メフィストから出てきた作家とはいえ、いまではこの舞城君をミステリ作家という範疇に縛りつけておく
ことはできなくなっている。だからこの作品も日本文学の書庫に入れた。
最近の舞城君はどうしちゃったんだろう?本書の刊行を境にとんと新刊が出なくなってしまったではない
か。本書が刊行されたのは2004年だった。おお、もう二年もブランクがあるではないか。
ぼくは、愛しちゃってるくらいお熱いファンだから決して忘れることはないが、一般の人にとってこの空
白の期間は忘れ去ってしまうに値する期間なのではないか?
スランプ?いったいどうしたんだろう?我がことのように心配してしまう今日この頃なのである。
と、前置きはこのくらいにして本書の感想なのだが、前作「好き好き大好き超愛してる。」ぐらいから
薄々感じてたことなんだけども、舞城君は結構強いメッセージを放射してるんじゃないの?
それはとても前向きなもので、元気でいこう、よく考えよう、正しく生きよう、人類を愛そう、愛こそす
べてって感じで、彼独特のグロテスクでキッチュな世界に散りばめられている。
相変わらず、人は飛ぶわ、全国のイトウタカコが次々と殺されるわ、猫がトトロになっちゃうわ、三人の
高校生が学校襲撃して六百二十三人を殺してしまうわと、あまりにも世紀末的なカタストロフィーが次々
とあらわれるが、でも真のメッセージはそういうこと、『愛こそすべて』なのだ。
う~ん、舞城君ってチャーミングじゃのう。
本書には5編の短編が収録されているのだが、なんといってもうれしかったのは「矢を止める五羽の梔
鳥」だった。この作品は、あの福井の西暁が舞台となっているのだ。おお、なつかしの西暁。いったい奈
津川家のあの『とんでも家族』はどうなっているんだろうか?こうなると、奈津川サーガのどどーんと長
いやつが読みたくなってくる。う~ん、とっても読みたい。
舞城君はやく戻ってきておくれ!