読書の愉楽

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マーガレット・セントクレア「どこからなりとも月にひとつの卵」

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 この作品はサンリオSF文庫の中でも人気の高い作品で多大な期待をよせて読んだのだが、見事にコケた^^。ほんと期待ハズレもいいところだった。

 数々の本書に関する言及から予想していたのは、もっと叙情的な、感傷的な作品だったのだ。

 しかし、作者の描く世界は軍事国家が勢力を増し果てしない戦争に明けくれる世界だった。中にはその迷宮に似た戦争社会の理不尽さを描いた「アイアン砦」や「日々の死」といった佳品もありそれに付随する皮肉なタイトルの「ラザロ」なんていうSFホラーなんかもあるのだが、総じてどうも盛り上がりに欠ける作品群だった。

 唯一「古風な鳥のクリスマス」がその設定のバカバカしさといい、小気味いい展開といい、なかなか楽しめる作品だったくらいか。

 表題作の「どこから~」も、J・R・R・マーティンの「サンドキングス」風の短編だったが、あちらより短くてその分インパクトも小さかった。

 通読して認識を改めた。本書は間違った評価をあたえられている。わざわざ探し出して読むほどの本ではないのだ。