読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

田中哲弥「やみなべの陰謀」

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 ビミョーだ。すごくビミョーな感じだ。

 千両箱と一人の男によって5つの話が結ばれる。タイムトラベル物なのだが、いかんせん収拾が甘い。それぞれの話は、そこそこおもしろい。

 第一話は『ある日突然~』というSFには定番のサプライズで物語がはじまる。ある日突然アロハシャツを着た大男に千両箱を届けられるのだ。

 第二話は千両箱を届けられた男の子が体験する不思議なボーイ・ミーツ・ガールのお話。

 第三話は、千両箱の出自が明らかになる悲恋の時代物。ここでタイムトラベルの原因も説明される。

 第四話は、少し未来の変わった世界。大阪府知事独裁政権により大阪が大阪らしくあるために「大阪特有の文化を失わせる」と見なされる行為が条例によって禁止されるようになってしまったのだ。その世界で静かに進行するレジスタンス活動が描かれる。

 第五話、ここですべての話が円環となってつながる謎の解明がなされる・・・・はずなのだが、このパートで明かされる事実がすべてを網羅しているわけではない。どうも、この部分が弱い。

 それが少し不満だ。すべてのピースがピタッ!とはまらないのだ。

 でも全体的にどうかといえば、それほど悪くない。吉本の台本作家として活躍していた著者の繰り出すギャグもおもしろい。いかにも吉本的だ。

 どうだろう?保留だな。この人は他の作品も読んでみて判断したいと思う。