読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ミカエル・ニエミ「世界の果てのビートルズ」

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いろいろな国の文学を読んできたが、スウェーデンはまだだった^^。

というわけで、本国では十二人に一人が読んでいるという空前のベストセラーとなった本書読んでみました。

本書は、いわゆる自伝である。スウェーデン最北の村パヤラ。フィンランドの国境に近いということもあって、どっちつかず的な場所なのが中立と対立を生むパヤラ。冬は二ヶ月も太陽がのぼらず、夏は白夜が続くツンドラに囲まれた村パヤラ。

そんな、世界から忘れ去られたような村で育つ少年のなかなか刺激的な日常が描かれていく。

スウェーデン最北の地での生活がどんなものなのか想像できますか?

コーヒーにトナカイの干し肉とチーズを入れて飲むなんて想像できますか?

黒人見たさに村人のほとんどが教会に集まってくるなんて想像できますか?

とにかく、本書に描かれるエピソードの数々はぼくに驚きをもたらしてくれた。

でも、どこの世界でも子どもは同じ。みんな無鉄砲で、何に対しても興味津々で、超がつくバカなのである^^。しかし、その無鉄砲さゆえに救われることもしばしば。

少年は思春期を迎え、大人への一歩を踏み出す。そこにあらわれるのが「ロスクンロール・ミュージッッス」。これ、誤記じゃないですよ。主人公が初めてビートルズのドーナツ盤を見て、そこに書かれている英語を読んだときの発音なのである。

とにかく、おもしろかった。胃のよじれる夏のアルバイトの章では、ほんとに胃がよじれそうになって、その後の食事にもいささか影響をおよぼしたが、『おもしろうてやがてかなしき』青春の日々がいつまでも余韻として残った。

ほんと、この新潮のクレスト・ブックスは素晴らしいシリーズだと思う。ハズレが異常に少ない。貴重なシリーズだ。