負けるときが多くなった。
なにに対しても、引き下がることが多くなった。
どうしてだろう?
まえは、怖いことなんてなかったのに。
怖いなんておもったことはなかった。
なのに、いまではいつも自分の立ってるところを守ろうとしている。
うれしい、かなしい、つらい、くるしい。
いろんな感情があるけど、
いつしかそんなことも忘れてしまった。
家路をいそぐ人たちの背中には、
重いため息が乗っかってる。
ぼくの背中も、あんな風に見えてるのかなあ。
いつもいつも考えてること。
言葉に出してみれば、なんでもないこと。
でも、それが一番大切なのかもしれない。
忘れていた大事なもの。
なんでもないのに、とても大事なもの。
ねえ、母さん。
ぼくには、母さんのくれた手袋があったよ。
いつもあったかい、母さんの手袋があったよ。
忘れちゃいけないんだ。
ぼくには、母さんがくれた手袋があったんだよ。