読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

マーガレット・ミラー「鉄の門」

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 温厚な性格の夫を持ち、何不自由なく暮らしているルシール。

 でも彼女は後妻であり、夫の妹であるイーディスとはいい関係を保っているが、先妻の残した二人の子供マーティンとポリーは成人した今にいたるまで一度も彼女になついたことはない。

 ルシール自身も未だに16年前に変死した先妻ミルドレッドの夢を見るほど不安定な精神状態だった。そんなある日、ルシールのもとに見知らぬ男から小さな小箱が届けられる。その中身を見たルシールは悲鳴を上げ、忽然と姿を消してしまい・・・・・。

 という感じの話なのですが、話がどういう風に落ち着くのかまったく読めない。読了したいまとなってはミステリ的な満足はあまりないと思うんですが、心理的な薄ら寒さはなかなかのものでした。さすがに時代を感じさせる作りであるものの、キラリと光るものがある。濃い霧の中を手探りで進むような閉塞感に始終とらわれている感じがしました。

 これがぼくの初ミラー作品なのですが、やはり世評通りの巧みさを感じました。

 この人は今後も追いかけていきたいと思います。

 それにしても、この表紙の女の人「エコエコアザラク」に似てるなあ。