読書の愉楽

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ティム・オブライエン「カチアートを追跡して」

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 とにかく快哉を叫ばずにはいられない作品だ。

 

 ファンタジーと現実が見事に融合して、素晴らしい世界を構築している。

 

 「ガープの世界」や「ウィンターズ・テイル」等と並び賞される本書は、現代アメリカ文学を代表する一冊といえるだろう。

 

 しかし、本書は読みにくさでもなかなかのものである。一貫した時系列で物事がすすめられるわけではないので、章が変わるごとに頭の中で整理が必要になる。でも、これはほんのささいなことである。

 

 アーヴィングは自由自在に時と場所を飛びかって、尚且つ破綻なく話を進めていく手腕に優れていたが、本書ではそれが少しひっかかりとなっている。だが、連作としてまとめられているのでその部分が目立ったのかもしれない。

 

 とりもなおさず、本書は傑作である。カチアートを追跡する一行の喜劇と、ベトナム戦争を生の声で伝えた悲劇がたくみにブレンドされた『おもしろかなしずむ』の世界だった。

 

 ラストには、ちゃんとオチがついてる。これを肯定的にとらえるか否定的にとらえるかは人それぞれだろうが、物語を丹念に追ってきた読者は肯定的に受けとることだろう。ぼくもそうだった。

 

 いまでは手に入りにくいかもしれないが、どうか読んでみて欲しい。何かを与えてくれることだけは確かである。