読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

「帰る途中」

街灯のあかりが葉にもれて君が哀しい。

町の塗装工場は夜遅くまで作業を続け、夜空に真っ赤な煙を吐きだしている。

ガシャンッ。

どうやら帰宅途中のOLと

運送トラックがぶつかったらしい。

ぼくは、口笛を吹きながら、家に帰る途中。

女の声。

助けを求めているようだ。

目の前を飛んでゆく蛍がきれいで

女を助けるどころではない。

次第に夜が白くなり、南の山のてっぺんの

鉄塔に吸いこまれて朝になった。

ぼくは、まだ家に帰りつかない。