描かれる事象は突飛なものばかりなのだが、そこに見出されるものは都会に住む人の、あるいは自分を見
失った人達の切実な孤独感だった。
恋人がサンショウウオになったり、母が祖母を産んだり、小鬼と人魚が高校に通っていたり、火の手と氷
の手を持つ少女達がいたりと並のファンタジーより奇抜な世界なのに、登場する女の子達のなんと現実的
なことだろう。
ベンダーの描く女の子達は容姿も充分魅力があって、強面の世界に対して張り合っていくだけの自信も備
えていて、一見したところ夢をかなえる資格充分なのだが、やはりそこにはままならぬ世の理があって、
それに直面した時あたりはばからぬ孤独感に苛まれてしまう。読者は、その孤独感に一種の『せつなさ』
を感じ、彼女達の切実な訴えを噛みしめるのだろう。軽く読めてしまうのだが、なかなか濃い一冊だっ
た。
このたび彼女の初長編が刊行された。「私自身の見えない徴」という作品だ。いまから読むのがとても楽
しみである。