この才能にほんと脱帽。
いままでにないスタイルで描かれる世界は、現実離れしていて出てくる人たちもエキセントリックなの
だが、どこか懐かしい感じで胸がキュンとしてしまう。
奈津川サーガにも登場したルンババ21も出てくる本書は、かなりいい感じの青春を描いてる。
だが、けっこう重たい。ズシンときちまう。毒もある。
しかし、その鋭利な感覚は驚きとともにグイグイ引っぱって見たこともない景色を見せてくれるのだ。
苦いけど甘く、辛いけど幸せで、苦しいけど楽しいって感じ。
この相反するものが混ざりあって結局落ち着いているのは、なんだかいい気分だ。得した気分といって
もいい。なかなか愛しい感覚だ。
まさかこの薄っぺらい本から、この密室本の一冊から、これだけの感覚を受けるとは思わなかった。
もっと軽く考えていた。ほんと、恐るべし王太郎なのである。