八つの短編それぞれが味わい深い。
特に気に入ったのが、「世話係」と「ムコンド」。どちらもアフリカが重要な舞台となっているが、それは関係ない。二つとも激しく魂をゆさぶられる話なのだ。
生きる意味や、荒ぶる気持ち、それと自然の素晴らしさが、おさえた筆致で語られる。作者のドーアは、まだ年の若い新人だが、熟練作家の手になる完成度の高い作品を書くと、絶賛されている作家である。
確かに巧みで、技量はずば抜けている。
自然の脅威と人間の衝動を、アメリカの良心で包んで温かく残酷に描かれた作品たちは、読む者の心を捉え訴えかけてくる。
ドーアは潜在的な詩人だ。だから彼の選ぶ言葉や描写は、的確でスマートなのだ。
中には、表題作や「ハンターの妻」のようなマジックリアリズム的な作品もあり、「七月四日」のような大ボラ話もある。
「もつれた糸」のような鋭い小品もあれば、「たくさんのチャンス」のような、さわやかな話もある。
要するに、たいしたやつなのだ。このドーアって作家は。心底感服してしまった。