17世紀末のアメリカ南部。とある村で捕まえられた魔女といわれる女。
魔女裁判を執り行うべく、この地にやってきた判事と若き書記のマシュー。しかし、マシューにはこの獄中にいる女が魔女だとは、どうしても信じられなかった。やがて、彼女を信じ愛しはじめるようになるマシュー。彼女は、本当に魔女なのか?それとも、隠された真実があるのだろうか?
マキャモンが、見事に返り咲いた記念すべき傑作である。
17世紀のアメリカを舞台に、ミステリアスな物語が綴られていく。
暗黒時代といってもいい未開の地アメリカ。人々は闇を恐れ、悪魔の存在を信じ、すがるものといえば神だけの時代なのだ。
そういう舞台でしか成立しえないこのミステリは、逆にいえば、その利点を最大限に引き出して読む者の心を捉えてはなさない。
主人公のマシューは、この時代にそぐわない好奇心のかたまりのような青年で、すべての断片が収まるべきところに収まらないと気がすまない性分である。あまり友達になりたくないタイプだが、彼が若さゆえの過ちと、若さゆえの情熱と、若さゆえのまっとうな正義感をふりかざして、闇の中を進む姿は読んでいて気持ちがよかった。
ミステリとしての完成度も、たいしたものだった。伏線が巧みに張られ、ラストに向けてあらゆる謎がピタリと納まる。
マキャモン復活。ほんとに、見事に返り咲いた。今後もおおいに期待したい。