読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

イサベル・アジェンデ「神と野獣の都 」

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あのアジェンデを期待すると、ちょっと肩すかしくらっちゃうかもしれませんが、これはこれで充分楽しめる冒険譚に仕上がっています。いわゆる秘境物ですね。

アメリカ人である十五歳の少年が、エキセントリックな祖母に連れられアマゾンの奥地に『野獣』を求めて探検にでる。

『野獣』とは何か?

『野獣』は本当にいるのか?

そして、探検隊の中で進行する不穏な動きの正体は?数々の謎をはらんでラストのどんでん返しまで物語はスピーディに展開します。

ヤングアダルト向けということで本筋のみがぶっとく語られ、枝葉が少ないきらいはありますが、しかしそこはアジェンデ、物語作家の本領発揮というわけで、気がつくと熱気をはらんだ密林のむせかえるような息吹に包まれ、闇に恐れを抱いている自分に驚いてしまいます。

主人公のアレックスはこの冒険を通して、たよりない少年からたのもしい大人へと成長していきます。

アマゾンの自然の厳しさを克服して自分に打ち克ち、依頼心やあきらめや虚栄心をねじ伏せて男としての誇りを自分のものにしていきます。本シリーズは三部作ということで、この先アレックスがどう活躍し、どう成長していくのかが楽しみです。

というわけで、久しぶりのアジェンデ作品は従来の完成度には及びませんが、秘境冒険少年成長小説としては充分楽しめました。