スタージョンの長編には、愛すべき彼の短編群にみられるおもしろさや、ウェットな面がストレートに伝わってこないという難点があるように思う。
「人間以上」にしても、本書にしても心に響く場面や設定はあるのだが、全体を均してみればちょっと弱い。
アイディアもユーモアもあるのに印象が薄いのだ。
しかし、すべてを否定するつもりはない。
本書の主軸とは別に語られた数々の挿話はよかった。
その挿話に登場する世界各地の人々が、ラストのカタストロフィに集約されていくワケなのだが、その料理の仕方についてもスタージョンの独壇場ともいうべき手際がみられてよかった。スタージョンは、まさに驚くべき配置でこの登場人物たちを操るのである。ちょっと驚いてしまった。だが、弱い。スタージョンだから許そうかって感じ。
本書もおそらく復刊されることはないだろう。そう思う。
となると、やはりサンリオSF文庫というのは、すごいシリーズだったんだなあと思うのである。意欲的というか、無謀というか、いまでは考えられないラインナップではないか。