読書の愉楽

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ルドヴィコ アリオスト「狂えるオルランド」

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サンリオSF文庫の「スタージョンは健在なり」が、ついこのあいだ東京創元文庫から「時間のかかる彫刻」として復刊された。その中に「ここに、そしてイーゼルに」という作品が収録されているのだが、そのネタになったのが本書「狂えるオルランド」でである。

本書は定型詩の形をとっている。

こんなの読むことになるとは思ってもみなかった。

失楽園」や「神曲」なんか絶対読むことないだろうし、読めないだろう。そんなぼくでも本書は読めた。それも、とても楽しく読了した。

剣と魔法、恋もあり、熱き友情あり、裏切りあり、誇り高き騎士がいて、唾棄すべき悪人がいて、気高き淑女がいれば、邪なる悪女がいる。次々といろんな登場人物が出てきて、新たなエピソードに発展していくさまは、こちらの興をついではなさない。アリオストのこのあまりにもオーソドックスな手法が逆に新鮮だった。山場にさしかかると、ひょいと他の場面に移ってしまう。でも、こちらの記憶が薄れないうちにまた戻ってくる。この間合いが絶妙で、アリオストの巧みな筆さばきに翻弄されまくりだった。

ひとつ難をいえば、アリオストが仕えていたエステ家を賞賛して、その先祖にどういう人がいて、どんなことをしてっていう場面が延々続く箇所がいくつかあったことだ。正直そこは軽く読み飛ばしました。

ともあれ、カルヴィーノをして『偏愛する作家』と言わしめたアリオストの傑作を読み逃すてはないでしょう?