前作「灰色の輝ける贈り物」も素晴らしかったが、本書も良かった。
っていうか、この人の作品を悪くいう人なんていないから、あらためて書くこともないのだが、しかしいい!
マクラウドの描く世界は、哀切に満ちて叙情にあふれている。自然の厳しさ、家族の温かさ、時代の趨勢、そして故郷を追われた流浪の民としての悲哀。
ただそこで暮らしている人たちを描いているだけなのに、なぜこれほどドラマティックなんだろうと歯噛みしてしまう。
朴訥で、頑固で、しかし情にあつく毎日を必死で生きている人たち。
我われが知ることもない、もうひとつの世界。
すぐそこにあるのにあまりにも遠いその世界が厳しさを押しのけて、とてもうらやましく思えてくる。
素晴らしい短編集だ。
いま、この人の唯一の長編「彼方なる歌に耳を澄ませよ」を読んでいるのだが、これも身震いするほど素晴らしい作品だ。
ほんとに得がたい作家だと思う。