読書の愉楽

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ジョー・キャラハン「瞬きすら許さない」

瞬きすら許さない (創元推理文庫)

 AI(人工知能捜査体)と休職明けの警視正キャットがバディを組んで失踪事件を捜査する。ブレスレットとして身につけることができ、ホログラムとして実体かと見まがう投影ができる汎用性AI。当然のごとく直観を重んじるキャットは最初からAIの試用に反発をおぼえる。

 統計や膨大な資料を瞬時に整理できる桁外れの処理能力はあるが、実際に現場に足を運びそこの印象をとらえたり、関係者に直に会って話を聞きその場の雰囲気を捜査に役立てたりといった曖昧で論理的に処理できない考え方を排除しようとするAI。地道な捜査、何度も足を運ぶ捜査を重んじるキャット。そりゃ合わないわな。

 とはいえAIの処理能力は人智をはるかに超え人間の能力はさすがに足元にも及ばない。映画なんか二秒で観ちゃうもんね。だが、機械は情や理性に反する行動にはまったくついていけない。あたりまえだ、人間じゃないんだもの。

 それでも、成果はある。もう誰もが匙を投げた失踪人探しに突破口が開ける。まあ、そうこなくちゃおもしろくないよね。相反するバディが徐々に絆を深めていく過程は常套として、いかにしてそれを自然にかつ効果的に読み手に飲み込ませるかが評価の分かれるところだとすれば、本書はかなりいい線いっている。他の登場人物のバックグラウンドが少々うるさい気もするが、シリーズ化されているというから後々それが厚みとなってかえってくるのだろう。 

 タイトルから勝手に期待したサスペンス的な要素はさほどでもなく、途中ハラハラ要素はあるけど予想は裏切らないし、緊張感はそうでもない。ただ、そのぶんAIと人間の確執の描かれ方が印象に残った。第二弾は殺人(磔刑だって、ポーのシリーズ連想しちゃうね)がお題だということで期待は高まる。

 AIが日常化している今の時代、本書のような世界が実現するのもさほど遠くないと思われる。一昔前なら完全にSFのお話だったけどね。巻末に著者の謝辞が載っているが、これ先に読んじゃだめですよ。内容を示唆する記述があるから、多くの人がピンときちゃうと思うので。本書の真相は充分狂気だけども心情的に理解できてしまうとこがやさしい。でも、残されたあのお母さんのことを考えると絶望しかないよな。