読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

今村翔吾「イクサガミ 神」

イクサガミ 神 (講談社文庫)

 

蟲毒を生き残った9人が東京に結集する最終巻。さて、何から書こうか。化物ばかりのバトルロワイヤルを生き抜いた面々は、東京のある場所にそれぞれ留置される。これから何が起こるのか皆目わからない。
主催側の目的がチラホラと見え隠れする中、いよいよ東京での最終目的が発表される。

 ここへきてなかなか胸熱なのであります。旅の途中で出会った様々な逸材が、それぞれの思惑を胸に秘めながらもそれぞれの信念のもと己の信じる道をゆくのであります。所詮殺し合いなんでしょ、血で血を洗う闘いばかりなんでしょと思っている方、ノンノンそんなことはありません。ここには、人と人との絆が描かれ、人が人を思う大切さや、人が人を助ける理由や、人が人のために成すべき苦しみがこれでもかと溢れているのであります。

 近代へと大きく変わろうとしている明治の日本という混乱の時代に、いったいこんな大掛かりなデス・ゲームがどうして成り立つのかと読む前は大きく頭を傾げていたけども、それゆえにこの物語が成り立つということが読みながらグイグイ胸に迫ってくる。日本全体がこれだけ大きく変化したことってなかったものね。

 多くの人が死んでゆく。死んでほしくない人も死んでゆく。悲しくて辛い別れが描かれる。いったい、いままでピンピンしていた人が目の前で死んでゆくってどういう気持ちになるんだろうか、ということをずっと考えながら読んでいた。さほどに本書の登場人物たちの存在感は素晴らしく胸に残る。尚且つNETFLIXでやっている岡田准一主演のドラマの影響で、脳内再生はドラマのままなのである。

 長い旅と闘いは終わった。終わってみれば呆気ない。何事も終焉は静かなものである。人の思いは世界を変える。そんなまやかしめいた戯言は信じなかった。でも、本書を読み終わった今、きっとそんな事もあるはずと心浮き立つ思いでいる。読めて良かった。