読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

佐藤春夫「更生記」

更生記 (春陽文庫 さ 25-1)

 

  若い頃に比べて、妙に落ち着いてきた今日この頃。好奇心に任せてあれやこれやを乱読し、基本新しい作品を手にとっていたあの頃には目も向けなかった古い作品に手を出そうという余裕が生まれてきたのだろうか。かといって、次から次へと読み進める中で置いてきた本も数しれず、そういう意味ではいったい自分は何を取捨選択してきたのだろう?と後悔も残っていたりする。おそらく、若い頃には本書のような昭和初期の本は読み通す忍耐がなかっただろうと思う。いまでも少しまどろっこしいなと思うもんね。
 
 おおらかな部分は大いに結構、しかし登場人物の言動に少し違和感を持つ。今の時代と、かつての時代そういうことをそんな風にするのかとか、そういうことを言っちゃったりするんだとか、まさしくジェネレーションギャップを地で行く心持ちだ。

 話としては、ある学生が深夜の線路でうずくまる若い女性を保護したことから始まる。その女性はたいそう美しく、教養もあるようなのだが列車に飛び込んで自殺しようと思っていたらしい。警察には届けないで欲しいという少々ヒステリー気味のその女性を家に匿うことになった学生は訳ありの姉と二人暮らし。大学の精神医学の助教授である猪俣教授に助けを乞うのだが・・・。

 眼目は、その女性がなぜ自ら死を選ぼうとしたのかというところ。調べていくうちに何年か前にその女性の身に起こった事件が発覚する。この事件には実際に起こったある事件のモデルがあるみたいで、そこには作者自身が反映されて登場人物として描かれる。展開はスローリー。そこをじれったく感じるか、滋味と感じるかで評価の分かれるところ。

 一応ミステリと認識して読み進めていたので、ありきたりの展開にうむむとなりながらも最後まで我慢してなんらかの驚きを待っていたのに、最後の最後にツェッペリンって!