こういうトーナメント的なゼロサム的な殺し合いを、廃刀令が施行されたあとに設定するのがまずおもしろい。だって、お侍さんは実質いないことになってるんだから、戦国時代みたいに大っぴらに斬りあいできる環境じゃないってことだからね。でも、まだそういう剣豪や化物級に腕のたつ者がいた時代だから(数年前までは新選組もいたし、この話の前年には西南戦争があったばかり)こういう話が成立してもおかしくはないのである。
で、京都から東京までの長い道のりの中で、莫大な賞金を懸けて勝ち抜き戦が行われる。一攫千金を狙う者、腕試しも兼ねて敢えて殺し合いを望む者、困窮から抜け出す手段として仕方なく参加する者、そういった有象無象が二百数十名集まることになる。
その中で生まれる様々なドラマと、並みいる強者たちとの死闘が本書の読みどころとなってくる。山田風太郎の「甲賀忍法帖」のような技と技の果し合いは、ぼくの好みではない。だから「甲賀~」はぼくの中では風太郎忍法帖のワースト3に入る作品だし、闘いが繰り返される展開は物語の起伏をなくしてしまいパターン化された筋書きのように感じてしまうから好きじゃない。
だが、本書は京都から東京という長丁場を辿ってゆくロード・ノベルであり、そこに内包するドラマには各人の思惑や秘密が描かれて飽きさせない作りになっている。展開もはやく、場面も現在と過去を無理なく出し入れして、本来なら本筋を離れると少しストレスを感じたりするものなのに、それもなく至ってスムーズに物語は進んでゆく。
闘いははじまったばかり。協力するかと思えば騙され、助けてくれるフリをして命を狙い、弱さを見せて罠にかける。まあ、いろんな奴がおります。かと思えば、サイコパス殺戮機械や果ては忍者みたいなのも出てくるし、おもしろさの振り幅は作者の思い通り。
さあ、では続きにかかるとしますか。
