この人、ぼくは伝奇物とホラーばかり読んでて、ミステリ作品はあまり馴染みがなかった。「総門谷」、「刻謎宮」そして「竜の柩」とこの人の伝奇物はすこぶるおもしろかった。でも、それぞれ続編はさほどでもなかったけど。
そんな著者の自選短編シリーズの『ミステリー編』なのであります。ラインナップは以下のとおり。
「悪魔のトリル」
「奇縁」
「卒業写真」
「遠い記憶」
「鏡の記憶」
「龍の伝承」
「蛍の女」
「鬼火」
「お化け蝋燭」
「歌麿カタログ」
「陰の歌麿」
「盗作の裏側」
「風俗史の問題」
バラエティーにとんでますよ。時代物はないけど、ノンシリーズ物から記憶シリーズ、ドールズシリーズ、九鬼虹人物、塔馬双太郎物などなど。エラそうに書いているけど、ドールズも塔馬双太郎も本書で初めて読んだんだけどね。
ノンシリーズは裏返し、逆説みたいな印象が強い。「卒業写真」なんか、いったいどう決着つけるの?と心配になるほどだった。めっけもんはドールズシリーズだ。本書の中では「鬼火」、「お化け蝋燭」がそれなのだが七歳の少女の中に蘇った江戸時代の人形師 泉目吉という特殊設定で、よくよく調べてみるとこのシリーズはじまりはホラーで次にミステリになって最後は伝奇になるという変則シリーズなんだって。これはちょっと気になる。塔馬先生物は浮世絵を扱う古物商の丁々発止のやりとりがおもしろい。これもどちらかというと裏返し、どんでん返し的なおもしろさがある。騙し騙されが凄まじい。
記憶シリーズは言わずもがなの大傑作「遠い記憶」が素晴らしい。「緋い記憶」の時も書いたが、この短編今回で読むの三回目だけど、やっぱりその完成度にビビッてしまった。「竜の伝承」も、「竜の柩」の興奮がよみがえったし、この人ほんと芸達者でおもしろい。
時代物も読んでいかなきゃいけませんね。
