上巻のラストでえらいことになって、いったいどうなるんだとヤキモキしながら下巻を読んだ。
やはり試練なのだ。叶えられない願い、届かない声、響かない思い。決断をしたのは逢衣だ。それは、守りに入った決断だった。彩香にとってその決断は、ほぼ死刑宣告だったと言ってよい。
お互いを愛する気持ちは、目に見えない力であるがゆえにストレートに伝わらない場合もある。本当は、相手のことを思うがゆえの行動なのにえてしてそういう時に限って誤解を生んだりする。
恋愛は甘いだけじゃない。辛さ、苦しさ、せつなさ、いろんな思いが渦巻く。真剣だからこそ相手を傷つけることもある。大切だからこそ、突き放すこともある。だから、相手を思うと同時に心の底から相手のことを信じなければならない。しかし、人間は弱い。自分のことは信じてくれと思うのに自分以外となるとなかなか信じられなくなる。一度疑念が生まれるとそれは決してとれない染みとなって心の中に残り続ける。
二人は、同じ道を選ぶ。それは、苦難の道かもしれない。しかし、二人はそれを恐れない。なぜなら、愛する人と共に歩む道だからだ。
逢衣の言葉の引用を許されたい。
『途中で引きちぎったからこそ、力ずくで無理やり引きちぎったからこそ、記憶のなかで私たちは永遠だった。』
『一波乗りきった私は再び次の現実に立ち向かうため、あなたの弾を脳内に装填する。』
愛するという行為は永遠だ。それが人類の営みだ。その根本を深くわからせてくれるのが本書「生のみ生のままで」なのである。
すごいな綿矢りさ。
