謎や繋がりが明確になるところがミステリの中心線だとすれば、それらを解明する人たちは傍線だ。でも、この傍線はとても大事でクレイヴン描くところの本シリーズは、この主要キャラクターたちの魅力が素晴らしいから、一度その世界にハマってしまったらもう抜け出せないのである。
しかし、ここに登場する主人公ワシントン・ポーもバディである天才ティリー・ブラッドショーもある程度馴染み深いステレオタイプなのかもしれない。正義感に燃え、自分を信じどんなに強い権力にも屈しない強さを持つポー。IT関係には最高レベルの知識をもち、国防省のデータに痕跡を残さずハッキングできるスキルがあるティリー。
二人ともいままで数多く読んできた本の中で似たようなキャラクターは何度かお目にかかった気がする。でも、そんな存在でも生きて精彩をはなつ魅力的な彼らにまた出会えると思うと、もうワクワクしてしまうのである。シリーズ物の大きな収穫だね。
というわけで、今回はいつになくものものしい舞台であの面々が活躍する。だって、各国の首脳が集まるサミットが行われるっていうんだから、ちょっといつもとは違う厳戒体制なのだ。そこで、サミットの関係者が殺される。どうも拷問されていたようだ。見つかった場所も転々と場所を変えてゆく臨時の売春宿。
安定のおもしろさは変わらず。いつものごとく読んでいる間中ずっとワクワク感がとまらない。それと短い章割りのテンポ良い展開にどんどん読まされてしまう。でもぼくは浮気性なので、YouTubeのコタツはんにも気をとられて、読み終わるまでにいつもより時間がかかってしまったけどね。
このシリーズのおもしろさは、事件の奥深さ。犯人が捕まったあとにもまだ物語は続くのである。そこで明かされる奥の奥。もう、たまらんよね。ポーとティリーがお互いを信頼し、尊敬しあっているのがこちらにも伝わるから、そこに安心が生まれる。それに加わる深淵な事件。それを解きほぐす過程の素晴らしさ。ほんと、おもろいよね。このシリーズ、ほんとうにずっと続いてほしい。
さて、次はどうする?ポー。