読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

M・W・クレイヴン「キュレーターの殺人」

キュレーターの殺人 ワシントン・ポー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  続けて三作目です。前回も書いたけど、犯人が捕まってからもやっぱりおもしろいんだなこれが。 
 今回は、各所で指が見つかるところから話が始まる。指は三人の人間のもので、中には生体反応が出たものもあった。しかも、それらが発見された経緯を考えると、犯人はどうやってその場に指を置いていったのか?という謎が残るところもあった。それぞれの現場には#BSC6という意味の分からない文字も残されており、カンブリア州警察は国家犯罪対策庁の重大犯罪分析課に出動要請。ポーたちおなじみのメンバーが捜査に加わることになる。

 もうね、最初っからなぜなーぜが目白押しなのであります。しかし、それが解決されて前に進んだかとおもうとまた新たな謎が出てきたりして、次から次へと読んでいってしまうんだなこれが。いったい犯人の目的は何か?被害者の間につながりはあるのか?ここでまた、ポーの鋭い観察眼とひらめきと緻密なロジックがフルスロットルで展開されてゆく。ナイスアシストのティリーも相変わらずの天才ぶりで、ほんとこの二人最強バディだよね。

 話の半ばで犯人が捕まる。半ば?あとどうなんの?って思うけど、このシリーズはここからが本領なのである。一応、事件の筋道が解明され落としどころとしての犯人逮捕となるのだが、ここでポーは思うのである。いやに簡単じゃないか?と。

 いや、充分入り組んでいて解明まで困難な道のりだったのだ。でも、ポーはそこに違和感をおぼえるのである。妙に道筋がはっきりしていたなと。さて、ここからどういう展開になるのか?読み終わったぼくは戦慄しているのであります。まさか、こんなラストをむかえることになるとは!ホリー・ジャクソン「卒業生には向かない真実」の時のような戦慄だ。それにしてもポーの鋭い推理が素晴らしい。掴めていないのに気になるとか、あの時見たものがこういうことだったのかとか、プロファイリングもさることながら、閃きが素晴らしいよね。
 でも、こちらとしても違和感はあって、やはりそこは現実的じゃないよなとか思う部分はあるんだけど、それでもこれだけおもしろかったら、まいいかって思ってしまうから、たいしたものだね。