これかなり古い作品なのに、今ごろになって文庫化されたもんだから、興味ひかれて読んじゃった。でもこれが、月並みな表現で申し訳無いんだけど、ほんと古さを感じさせなくて読み応えバッチリなのだ。
300ページほどだから紙幅はほどほどなのに、どうよ、この満足感。いったい何がそんなに良かったのかというと、それを詳らかにするとこれから読む人の面白さを半減させちゃうので、そこは語るわけにはいかないのだが、ボカして語っていくね。
要は二つの物語が交互に語られるのである。一つは、第二次大戦中、Uボートからの攻撃を受けて、海中を漂うことになったタンカーに閉じ込められた男女のサバイバル。もう一つは、宇宙を新たな新天地を求めて漂う異星人の大移民船団が直面する生死を分つ問題。それぞれが異常な状況下で生き残るための戦いを描いているのだが、これがSFならではの壮大な展開をみせるのである。
これ以上は、詳しく書けない。できることなら、本書の解説も先に読まずに本編を読むべきだ。そうすれば、驚異のストーリーがあなたの目の前に開けていくことだろう。と、ここで終わるべきなのだが、愚かなぼくはまだ語るのをやめることができない。
正直、海中を漂うタンカーのパートの方は、タンカー内部の構造が詳しく描写されるのだが、何号タンクがどうのとか、露天甲板がどうのとか、前部隔壁がどうのとか言われてもあまりピンとこない。ここらへんタンカーの詳細図があれば、よく理解できたんだろうなと思うのだが、読了してみればそんなこたぁどうでもいいかと思ってしまうのである。そういう細部の描写は、物語にリアリティを与える上で不可欠なだけで、描写される事柄がまんま頭の中に投影されなくてもなんら問題はない。そう言い切っちゃう。
そんなことより、この物語は大きなため息とともに読了する物語だということを強調しておきたいのだ。どちらの状況もありえない状況だ。それに直面した彼らはどうやってその問題を解決したのか?また、それは解決されたのか?そして解決したのならその先にはどんな未来が待っていたのか?
どうか、みなさん自分の目で確かめてほしい。この驚異の物語を!