読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

クリスチアナ・ブランド「濃霧は危険 (奇想天外の本棚)」

濃霧は危険 (奇想天外の本棚)

 ブランドだからといって飛びつくわけではないのだが、山口雅也氏の奇想天外の本棚の一冊だし、興味に抗えなかったというわけ。でも、やはりジュブナイル枠というだけあって、なんとなくいいくるめられた感のある御都合主義満載で、話の筋的にはありえない展開ばかりなのだが、シャム猫のサンタが大活躍だったから、良しかなと。

 しかも山口氏の前口上がなかなかの雰囲気で、これから始まる少年の冒険に巧みに誘導する書きっぷりは素晴らしく、年甲斐もなくワクワクしてしまった。ブランドに対する愛情はぼくも氏に負けないと思っていて、一般にミステリ黄金期の三巨匠と目されているクリスティ、クイーン、カーよりもブランドが上なのは、きまりキンタマなのである。

 さて、本書の内容にもちょこっと触れておこうか。主人公のビルは、裕福な家のいわゆるおぼっちゃん。それが思いもよらない裏切りにあい、ダートムアの濃霧たちこめる夜に放り出されてしまう。同時に進行しているボースタル少年院の脱獄事件。無我夢中でさまようビル少年と絡みあう様々な思惑。そこで浮上する宝石強奪事件。ビルを助ける眼帯の少年パッチとシャム猫のサンタ。誰が味方か敵かわからないまますべてはウェールズのとある岬に向かってゆく。

 なんかねー、訳がまずいのかな。イマイチ情景が入ってこないんだよね。言い回しがややこしいところがあったりして、ジュブナイルにしては不親切かなと。

 それでも、ブランド好きは読んでおきたい一冊だね。といいながら、いままでの刊行本をすべて読んでいるわけじゃないんだけどね。