読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

平山夢明「俺が公園でペリカンにした話」

 

俺が公園でペリカンにした話

 これまで刊行された平山夢明の本の中で一番分厚い。しかも連作ときた。いままでにないパターンだ。全部で20話。なげーよ。サイテーだよ。何読ませんだよ。特別だよ。いたしかたないんだよ。雨も降ってんだよ。なのに読んじゃうんだよ。でも、続けて読めねーんだよ。帯にも『用量一日三頁迄!!』って書いてあるんだよ?でも読んじゃうんだよ。 

 とりあえず落ち着こう。ここで描かれるのは、名もなき浮浪者然とした男がヒッチハイクをしてたどり着いた町で起こる顛末だ。ま、それが20回繰りかえされるってことなんだけどね。それがまあ酷い話ばかりで、それが、あーた、なんとも絶妙な言い回し満載で繰り広げられるから、こちとら脳みそがバーストするんじゃないかって、ヒヤヒヤもんで読んでいる始末。
 
 たとえばこんなやつ

 「デロズベ歩きのオベチョガールでも親ゴネ一発芸能界の人気者。どんなに苦労辛抱忍耐根性があったって所詮、この世は金待ちの胴元のイカサマ博打。才能努力なんぞ鼠の糞ほどの価値もねえって面つきな」

 なんのこっちゃ。でも、それが沁みわたる。身体に、血に、脳に。悪いクスリだぜまったく。

 しかし、これ読めばしばらく平山本は必要なくなる。それほどにどっかりと居座っちゃう。地獄行きの地獄巡りの地獄ツアーをお望みのかたはどうぞ読んでください。あ、といってもスプラッターとかグチャグチャとかはまったくないんですのよ。

 いってみれば『毒』だね。人間のあらゆる悪い部分が描かれる。でも、適度なユーモアがあるから当てられることはない。
 さて、みなさん、読みますか?読みませんか?