読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

舞城王太郎「短篇七芒星」

短篇七芒星

 

 今回というか先の「短篇五芒星」もそうだったのだが、読了した印象は少し物足りないものだった。さらに今回は七つの短編が収録されているので五芒星の時より小粒ちゃんな印象なのだ。まずは収録作をば。

 「奏雨」
 「狙撃」
 「落下」
 「雷撃」
 「代替」
 「春嵐」
 「縁起」

 珍しく、おとなしいタイトルだよね。漢字二文字で統一されているしね。で、内容もいつも通りの尋常じゃないものばかりなんだけど、いつも感じる世の理とかまっとうな気持ちとか、ゆるぎない正義とか信じる心とか何気なく処理している人間関係のしがらみなんかを感じとれるものが前半の作品になかったのだ。あれ?これ、舞城くんの本だよね?なんかいつもと様子が違うんですけど?
 
 でも話的にはおもしろいし、短いからスイスイ読んじゃう。片脚だけ切り落とす殺人鬼?狙撃した弾が消えて、後日どこかの悪人が死んで心臓の中からその弾が見つかる?いつも同じ時間に投身自殺の音が聞こえる?捨てても捨てても戻ってくる神がかった石?はなしの枠組みはいつも通りの舞城作品だ。でもそこに物事の本質を見つめる聡明で手堅い眼差しがないのだ。でも、それに続く後半の三作には、その欠けていた部分がそこかしこに顔をのぞかせホッとする。いた、舞城くん。やっと見つけた❤️てなもんである。特にラストの「縁起」は「畏れ入谷の彼女の柘榴」を彷彿とさせる作品で、物事の本質を見極める思考の過程や会話の文脈を見定める術などが華麗に描かれて大いに溜飲が下がった。やっぱり舞城くんは、こうでなくっちゃ!

 というわけで、やっぱり舞城くん、好き好き大好き超愛してるー!!!なのだ。