読書の愉楽

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山野 一「四丁目の夕日」

 

 

四丁目の夕日 (扶桑社コミックス)

四丁目の夕日 (扶桑社コミックス)

  • 作者:山野 一
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2015/01/17
  • メディア: Kindle
 

 

 トラウマ漫画として有名な作品。貧しいながらもみんなで力を合わせて精一杯生きている町工場の一家。それがある日を境にコロコロと坂を転げ落ちてゆき、人生の地獄に堕ちてゆく。考える限り最悪の状況。グログロ、グチャグチャ。究極に人体も損壊されてゆく。

 なのに。それなのに、ちょっと笑えてしまうというのはどういうことだ?これは、ぼくだけなのか?トラウマ?いやいや、ぼくは全然大丈夫だったよ。でも、ここで描かれるのは最低最悪の状況だ。これがわが身に起こったらと思うと、目玉が裏返って卒倒してしまうだろう。作者は、主人公をこれでもかこれでもかと奈落の底に突き落とす。這い上がろうとする主人公の顔を蹴って、また突き落とすのである。
やがて主人公は、精神に異常をきたす。そりゃ、そうなるわ。こんな不幸ないもの。

 で、最後の最後に最高潮の惨劇が起こるのである。ぼくはここで思った。あら、ソローキンこんなとこにいたのねって。正直、ソローキンの作品をまともに読んだことはないのだが、あの「ロマン」を彷彿とさせる惨劇なのだ。でも、ぼくはここでも笑っちゃうんだな。デビルマンのラストの惨劇では決して笑うことなかったぼくなのに。

 というわけで、本書トラウマ漫画らしいけど、ぼくはかなり笑っちゃったのであります。これだったら、「トラウマ文学館」に収録されていた直野祥子「はじめての家族旅行」のほうがよっぽどトラウマ残ったけど。