本作はクライトンのデビュー作です。話の筋はごくごく単純。人工衛星が運んできたと思われる未知の病原体によって一つの町の住人がたった二人の人物を残して全滅してしまいます。生き残った二人というのは、生後まもない赤ん坊と老人という奇妙な取り合わせ。さて、どうしてこの二人だけが生き残ったのか?
SFといっても、本書で描かれている事は現実に起こりうるものです。それをドキュメンタリータッチで描いているからよりサスペンスが強調されます。
未知の病原体を探る科学者達の試行錯誤の努力を横目で見ながら、すでにわかっている結果をちらつかせ、その過ちを指摘してゆく手法はページを繰る手を早くさせます。これから起こることじゃなく、すでに起こったこととして描くことでサスペンスにとんだ展開になるわけです。そういえばキングの「キャリー」もこれと同じ手法で描かれてましたね。
とにかく、本書を読んで得られる知的興奮は並大抵のものではありません。
どうか是非手にとって見てください。