豊饒な物語世界を堪能しました。
これぞ小説を読む醍醐味というものです。
アメリカに渡ってきたギリシャ系一家の三代にわたる長い歴史。
ユージェニデスはそこに近親婚と、両性具有という稀有な、それでいてかなり魅力的な題材を盛り込んで、いままでにない壮大なサーガであり、アメリカの年代記であり、苦悩に彩られた青春記である本書を描き上げています。
先に紹介した「精霊たちの家」も同じですが、やはりぼくはこのような物語としての魅力にあふれた長編が大好きです。
読んでる間中、この話がずっと続けばいいのにと思いました。
こういう物語は、登場人物が魅力的でないと興を削がれてしまうのですが、本書に出てくる人たちはみなとても魅力的でした。
ギリシャという古風な土地の因習を引きずって、新世界に溶け込みきれない愛すべき人たち。
どこかアジアの民族とだぶってしまうギリシャの人たち。
本書は、とても尾を引く本ですよ。