ユーモアと奇想に満ちた、ぼく好みの作品でした。
とてつもないホラ話が歴史の真実とうまくブレンドされ、読者を巧みに幻想の世界へと誘ってくれます。
多くのメタファーと、哲学的な登場人物たちの思考、それに時空を飛びこえてしまう脈絡のない構成と本書の特徴を並べてみると、なんと難しそうな本なんだと思ってしまうでしょうが、それがまったく気にならないんです。
はっきりいって、そんなこたぁどうでもいい。
象をも打ち負かす犬女のパワーショベルなみのド迫力と、愛すべき翼のない天使のジョーダンが語る、素敵でグロテスクな物語を充分に堪能できれば、それでいいんです。
ファンタジーの奇想と、その影にかくれながらも強く訴えかけてくるエコロジーへの痛切な叫びが、妙に胸に迫ってくる不思議な作品。
本作は、現代イギリス文学を代表する女流作家の手になる素敵な寓話です。
読めば必ず、小躍りしたくなるほどうれしくなってしまいますよ。