読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

奇妙なエレベーター

ぼくは誰かとビルに入っていく。

入り口をくぐるとホールになっていて、そこには懐かしい面々が集っている。

どうやら、同窓会らしい。

ぼくと相棒は、みんなに挨拶しながらエレベーターに乗り込む。

驚いたことに、エレベーターには階数表示のボタンがない。どうしたらいいんだと、ぼくと相棒が戸惑っ

ていると、天井らへんから声がきこえてきた。


「何階までご利用ですか?」


ぼくと相棒は瞬時に理解した。どうやらこのエレベーターは、音声認識エレベーターらしい。

そこで相棒が応えて言った。


「30階までお願いします」


すると、一瞬間があってからエレベーターがゴトゴトしだして、こう言った。


「合点承知でい!!!」


いきなり江戸っ子になった。ぼくと相棒は目を見合わせ、こりゃおかしいぞと思ったが、その時にはもう

エレベーターは動き出していた。

グングン上がっていくが、途中でガクッと止まってしまった。

驚いているぼくらには、何もすることが出来ない。


「ただいま5階ですが、ここでよろしいでしょうか?」


「何言ってんだよ!おれは30階までって言ったんだ!」


「合点承知でい!!!」


エレベーターはまた動きだす。

こちらは、だんだん不安になってくる。

グングン上がっていくのだが、階数表示が5階からいっこうに変わらない。上がっていく感覚はあるのだ

が、依然5階のままなのである。


「おい!階数が5階からいっこうに変わらないじゃないか!」

相棒が言った。


「承知しました。このままでは30階までいけませんので、少し斜めに上がってみます」


へ?と思った瞬間、エレベーターはピタッと止まった。

シーンとなる。

ぼくと相棒は顔を見合わせた。

と、ガクッと揺れてエレベーターが傾いた。斜めになったのである。


「おいおい、このまま上がったら外に飛び出るじゃないか!!」


相棒が言った。


「合点承知でい!!!」


ゲーッ!と思った瞬間、エレベーターはまた動き出し、そのままビルの外に飛び出した。飛び出した瞬間

扉が開いて5cmくらいの隙間ができた。

外が見える。5階のままだったらしく、予想してたより高くなかった。

だが、地面がどんどん近づいてくる。ものすごいGがかかって、ぼくと相棒は天井にへばりついていた。

あっ、落ちると思った時、ぼくは天井についていた出っ張りをつかんだ。腕が抜けそうな衝撃はあった

が、なんとか命は助かった。相棒も同様に助かったようである。

うまい具合に扉が横になって落下したため、ぼくらはそこから外に出た。


その途端


「あいつらだ!追え、追えーっ!」


5、6人の警官が、ぼくたちを指さして追いかけてきた。

もうなにがなんだかわからないが、とにかく逃げた。

走って、走って、走りまくる。

気がつくと、ぼくは相棒とはぐれていた。

どこかの下町。浅瀬の川が流れている。城下町かな。ぼくは、映画のセットみたいだなと思いながら、白

壁の大きな蔵の壁にへばりついて川を見下ろした。

ハアハアと息が荒い。吐きそうだ。なぜこんな目にあうのだろうと思ったが、心あたりがない。

しいていえば、乗っていたエレベーターが壊れた事だが、あんなの不可抗力だ。ぼくらにせいじゃない。

と思った時、また


あいつだ!あそこにいるぞーっ!」


の声とともに5、6人の警官がやってきた。川をはさんだ向かい側だ。

こちらに渡ろうとしても、橋がない。

ぼくは、少しいい気味になって相手を挑発した。

警官の一人が拳銃をかまえる。ぼくに狙いをつけて。

うそぉーっ!と思ったところで目が覚めた。