読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

海外SF

シオドア・スタージョン「コスミック・レイプ」

スタージョンの長編には、愛すべき彼の短編群にみられるおもしろさや、ウェットな面がストレートに伝わってこないという難点があるように思う。 「人間以上」にしても、本書にしても心に響く場面や設定はあるのだが、全体を均してみればちょっと弱い。 アイ…

シオドア・スタージョン「ヴィーナス・プラスⅩ」

ぼくがはじめて読んだスタージョン作品は、「人間以上」でした。 この本、確かに傑作だといわれるだけあって素晴らしい作品だったんですが、難解だなと思ったのも事実でした。読んでいて、作者の頭の回転についていけないなと思ったことが何度もありました。…

マイクル・クライトン「アンドロメダ病原体」

本作はクライトンのデビュー作です。話の筋はごくごく単純。人工衛星が運んできたと思われる未知の病原体によって一つの町の住人がたった二人の人物を残して全滅してしまいます。生き残った二人というのは、生後まもない赤ん坊と老人という奇妙な取り合わせ…

トム・リーミイ「サンディエゴ・ライトフット・スー」

この人、日本では不遇な作家だと思います。 なかなか全貌が明らかにならない。この本も、変な本が多かったサンリオSF文庫の中で数少ない傑作本だといわれながら、復刊もままならず(福武書店撤退しちゃいましたからね)いまだに入手しにくい状況になってい…

コニー・ウィリス「犬は勘定に入れません~あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」

では、「ボートの三人男」を本歌取りした傑作SFいってみましょうか。 本書はタイムトラベル物であります。21世紀と19世紀を行き来し、過去の遺物を存続しようとする史学生ネッドとヴェリティが本書の主人公。 で、あのユーモア小説「ボートの三人男」…

シオドア・スタージョン「影よ、影よ、影の国」

現在絶版のスタージョンの怪奇、幻想短編集であります。最近、再評価が高まっているスタージョンですが、本書におさめられている短編は、現在でもほとんど読むことができない状態です。どこかの出版社さん、是非復刊お願い致します。 以下簡単に各作品につい…

オードリー ニッフェネガー 「 タイムトラベラーズ・ワイフ 」

残酷な話だと思います。これほど痛みをともなうタイムトラベル物は、初めてです。 ロバート・F・ヤングの短編に「リトル・ドッグゴーン」という短編があるんですが、あれを読んだ時に感じた胸を衝く痛みと同じ感触です。ヤングの方はタイムトラベルじゃなく…

リチャード モーガン 「オルタード・カーボン」

遥かかなたの未来の話なんで、感覚としては現代と戦国時代くらいの文明の隔たりがあるんですが、一番のアイディアはタイトルにもなっている「オルタード・カーボン」。人間の心がデジタル化されメモリー・スタックに保存されているんです。だから、肉体が損…

ロバート・F・ヤング「ジョナサンと宇宙クジラ」

ぼくの独断と偏見で決めた感涙SFベスト3の二冊目です。 ロバート・F・ヤングの作品をひとつでも読めば、誰もが彼の虜となることでしょう。とにかく彼の作品は甘い。そしてひしひしとせつない。 本を読んでいて涙を流すことのなかったぼくが、はじめて涙…

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「たったひとつの冴えたやりかた」

この本は、ぼくが勝手に決めている感涙SFベスト3の一冊です。 まず、作者の名前に注目してください。どう見ても男名ですよね。でも、この作者女性なんです。 彼女がデビューしたのは60年代も後半、そして女性だということが発覚したのが76年。その間…