読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

時代小説

菊地秀行「追跡者 幽剣抄」

幽剣抄の第二弾である。あいかわらずうまい。なんか、うれしくなってしまうね。昔はたいへんお世話になったけど、しばらく音信不通だった知人に久しぶりに再会したような驚きと感動がある。 やっぱりこの人、以前と同じいい人なんだなあって改めて再確認した…

山田風太郎「室町少年倶楽部」

忍法帖から明治物を経て、山田風太郎が最後に辿りついたのが絢爛たる妖しの室町時代だった。 乏しい知識を総動員してぼくなりに室町時代を考察してみるに、あの時代とは戦国の世と江戸時代とが巧みにブレンドされた時代のように思えるのだが、どうだろうか?…

菊地秀行「幽剣抄」

菊地秀行の新刊はもはや読書の対象外になって久しい。前にも書いたが、昔は彼の作品を好んで読んでいた時期もあった。「吸血鬼ハンターD」や「エイリアンシリーズ」は大好きだったし、あまた量産されたバイオレンス小説も読んできた。でも、いまでは菊地秀…

山田風太郎「妖説太閤記」

この本を読むまでは秀吉といえば下克上であり、立身出世の鑑として貧しい出自から己の才覚だけで天下をとった男というイメージがあった。 しかし、しかしである。この風太郎太閤記の醜怪で異様な秀吉の姿をみよ。 秀吉の原動力は『女』なのだ。ただ『女』を…

山田風太郎「忍法創世記」

忍法帖で未刊行のものがあったと知ったときは驚いた。 本書が刊行されたとき、気を失うのではないかと思うくらい興奮したものだ(笑)。 本書を読了して、あらためて山田氏自身の自作への辛口の評価にヤキモキしてしまった。氏のこの評価ゆえに刊行されない…

山田風太郎「幻妖桐の葉落とし」

忍法帖ではない山風の時代小説としてのエッセンスが詰まった短編集である。 巻頭と末尾以外の作品はすべて現在入手出来ない作品だ。ハルキ文庫の快挙に拍手である。では、簡単に各作品について 表題作は、忍法帖の匂いかすかに漂う傑作である。秀吉の死の際…

藤沢周平「消えた女」

ぼくが一番最初に読んだ藤沢作品が本書だった。 読み終わって、そのあまりにもあざやかなラストのシーンにとても感動したのをおぼえている。 いままで読んできた本の中でも、1、2を争う名ラストシーンだと思う。 体裁も時代物ながら、そこに流れるスピリッ…

山田風太郎「魔群の通過」

これが、実際にあったことだというのが信じられない。 目にあまるものがあった。 悲惨というか、壮絶というか、なんともやりきれない哀しい話ではないか。 江戸末期、水戸藩の中で内戦があった。尊皇攘夷を唱える過激派が筑波山にて挙兵したのだ。 しかし、…

山田風太郎、忍法帖ベスト10 上位五作発表!

というわけで、昨日の続きです。上位五作品の発表いってみましょうか。 ■第五位■ 「銀河忍法帖」 昨日紹介した「忍法封印いま破る」の前日譚なのが本書。 徳川幕府の智嚢(ちのう)といわれた大久保長安。佐渡の金山を開発し、幕府の財源として多大な功績 を…

山田風太郎、忍法帖ベスト10!

大好きな山田風太郎のことをもっと語りたいので、独断と偏見でぼくの忍法帖ベスト10を選出してみま した。ベスト10の時期でもありますしね。長くなりそうなんで、二回に分けたいと思います。今回は、 10位から6位を発表!では、早速いってみましょう…

山田風太郎「魔界転生」

いわずとしれた、風太郎忍法帖の最高傑作ですね。 ぼくがこの本を読んだのは、まだ中学の時でした。 風太郎忍法帖のおもしろさは充分わかっていたんですが、本書のおもしろさはケタはずれでした。 振り返ってみても、本を読むのに寝食忘れたのはこの本だけで…

鳥越 碧「一葉」

樋口一葉といえば「にごりえ・たけくらべ」を書いた人というくらいしか認識なかったし、その作品に接 したこともなかったのですが、そうか、この人はこんな思いをして小説と向き合っていたんだと新鮮な気 持ちで読みました。 彼女は天才でした。 でも天は、…