読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

井上雅彦編「吊された男―異形アンソロジータロット・ボックス〈3〉」

タロットカードの吊るされた男の絵柄に因んで首吊りを題材にした短編アンソロジー。ラインナップは以下のとおり。 「アウル・クリーク鉄橋での出来事」アンブロース・ビアス 「首吊り三味線」式貴士 「百物語」岡本綺堂 「首つり御門」都筑道夫 「蜘蛛」H・H…

スティーヴン・キング「夏の雷鳴   わるい夢たちのバザールIⅡ」

昨年刊行されていた二分冊短篇集のⅡのほうであります。二冊一緒に購入したはずなのに、Ⅰの「マイル81」がまったく見当たらないので、本書から読んだんだけど、これはどっちから読んでもまったくモーマンタイ。 各編にキング自身のコメントがついていて、作…

藤谷治「燃えよ、あんず」

「恋するたなだ君」と「誰にも見えない」を読んで、なんと自由度の高い作家さんなんだと感心し、また楽しく読んだのだが、しばらくご無沙汰でした。本屋さんの新刊コーナーでたまたま手にとってみたら、なんとも予想のつかない本でもあり、部厚さもそこそこ…

芦花公園「ほねがらみ」

作者のことはよく知らなかったのだが、本屋で見かけて面白そうと手にとった。 ドキュメント的な「残穢」みたいな展開と怖さを求めていたのだが、ちょっと違った。でも、つくりはそういう感じなのだ。怪談を集めるのが趣味という医師が主人公で、その彼の元に…

小栗さくら「余烈」

とても手堅い印象だ。ここには、江戸の最期の姿が活写されている。描かれる時代が時代だけに、そこには大きく変わる歴史の波に翻弄される人々が描かれる。正義や忠義や道義が悔恨や裏切りや翻心と並列に行われる理不尽な世を大志の元に生き抜いた人々。ゆえ…