読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2020-01-01から1年間の記事一覧

森村誠一「人間の証明」

人間の証明 (角川文庫 緑 365-19) 作者:森村 誠一 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 1977/03/01 メディア: 文庫 ずいぶん古い作品だ。これを読んだのはもう二十年も前になるだろうか。森村誠一の小説はこれ一冊しか読んだことがない。とにかく映画が有名で…

頭木弘樹 編「絶望書店 夢をあきらめた9人が出会った物語」

絶望書店: 夢をあきらめた9人が出会った物語 作者:山田太一,藤子・F・不二雄,BUMP OF CHICKEN,ベートーヴェン,連城三紀彦,ナサニエル・ホーソン,ダーチャ・マライーニ,ハインリヒ・マン,豊福晋,クォン・ヨソン 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2019/…

サマセット・モーム「月と六ペンス」

月と六ペンス (新潮文庫) 作者:サマセット モーム 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2014/03/28 メディア: 文庫 モームを読むのは初めてなのです。で、いっとう最初に本書を選んでよかったなあと思うのであります。ぼくも本読みの端くれなので、一応有名どこ…

スティーヴン・キング「ペット・セマタリー(上下)」

ペット・セマタリー(上) (文春文庫) 作者:スティーヴン キング 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 1989/08/17 メディア: 文庫 ペット・セマタリー(下) (文春文庫) 作者:スティーヴン キング 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 1989/08/17 メディア: 文庫 …

C・J・ボックス「逃亡者の峡谷」

逃亡者の峡谷 狩猟区管理官シリーズ 作者:C.J.ボックス 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/12/27 メディア: Kindle版 このシリーズは、ゆっくり読んでいこうって言ってたのに、もう読んじゃった。それというのも、本書は、ジョー・ピケットシリーズ…

C・J・ボックス「裁きの曠野」

裁きの曠野 (講談社文庫) 作者:シー.ジェイ・ボックス 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/05/15 メディア: 文庫 やあ、ジョー、また会ったね。そう言ってぼくは本を開いた。彼は相変わらず忙しそうで、相変わらず頑固者だった。今回は、地元を掌握する何…

皆川博子「巫女の棲む家」

巫女の棲む家 (中公文庫) 作者:皆川 博子 出版社/メーカー: 中央公論社 発売日: 1985/08 メディア: 文庫 本人曰く、皆川博子自身の実体験が70%含まれているらしい。本書で描かれているのは、一人の霊媒師の存在をきっかけに新興宗教として確立されてゆくあ…

島田荘司「水晶のピラミッド」

水晶のピラミッド (講談社文庫) 作者:島田 荘司 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1994/12/07 メディア: 文庫 本書が刊行された当時、島田荘司の書くミステリは常套を大きく逸脱していた。ま、ミステリ作家の誰もが過去の模倣をベースに独自のアレンジやケレ…

レオ・ペルッツ「どこに転がっていくの、林檎ちゃん」

どこに転がっていくの、林檎ちゃん (ちくま文庫) 作者:レオ ペルッツ 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/12/11 メディア: 文庫 ペルッツは手堅い。本書で四冊目だが、毎回ほんとうに読書の愉楽を味わわせてくれる。それぞれまるで馴染みのない舞台設定…

赤川次郎「一日だけの殺し屋」

一日だけの殺し屋 (1981年) (角川文庫) 作者:赤川 次郎 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 1981/11 メディア: 文庫 本を読みはじめた中学のころ、当然ブームだった赤川次郎にも手を出したわけで、一番最初に読んだ彼の短編集が本書だったと記憶している。い…

スティーヴン・キング「クージョ」

犬がね、人を襲うんですよ。それだけの話なんですよ。それをね、キング御大は500ページ弱も書き綴るんですよ。真似できないっすよね。誰がそれだけの題材で小説書こうなんて思う?思わないよ、絶対。 でもね、これが読んでみると無茶苦茶面白いんだ。この…

山田風太郎「自来也忍法帖」

自来也忍法帖 (1981年) (角川文庫) 作者:山田 風太郎 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 1981/04 メディア: 文庫 正直いって、本書は忍法帖の中では下の下の作品なんだろうね。風太郎自身の評価によれば本作はC評価(ちなみに、この作者自身の評価は読者の…

ジョナサン・フランゼン「ピュリティ」

ピュリティ 作者:ジョナサン フランゼン 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/04/18 メディア: 単行本 アーヴィングとフランゼンの小説はいつも時間をかけて読む。自然とそうなっちゃう。少しずつ読んで、その豊穣な世界を自分の中に沈殿させようとする…

赤川次郎「三毛猫ホームズの青春ノート」

三毛猫ホームズの青春ノート (岩波ブックレット (No.38)) 作者:赤川 次郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1984/11/20 メディア: 単行本 懐かしい。これが刊行されたのが35年前。ひゃあ、とんでもなく昔じゃん!その当時、高校生だったぼくは、まだ本を…

ニック ドルナソ「サブリナ」

サブリナ 作者:ニック ドルナソ 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/10/17 メディア: 単行本 BD(バンドデシネ)は何冊か読んだのだが、本書はアメリカ産だ。もちろん日本の漫画とは感触が違う。まして、BDとも全く違う感触だ。 無機質的なと形容す…

白石あづさ「世界のへんな肉」

世界のへんな肉 (新潮文庫) 作者:白石 あづさ 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/04/26 メディア: 文庫 世界のへんな肉 作者:白石 あづさ 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/10/31 メディア: 単行本(ソフトカバー) この本の著者はなかなか思い切っ…

陳浩基「世界を売った男」

世界を売った男 (文春文庫) 作者:陳 浩基 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2018/11/09 メディア: 文庫 ミステリマニアのハートをくすぐるミステリっての?とにかく、本書はそういうミステリマインドにあふれた作品となっている。 だって、印象的なプロロ…

ペク・スリン「惨憺たる光」

惨憺たる光 (韓国女性文学シリーズ6) 作者:ペク・スリン 出版社/メーカー: 書肆侃侃房 発売日: 2019/06/27 メディア: 単行本(ソフトカバー) グローバルな雰囲気の味わえる韓国文学。しかし、そこで語られる本質はいたって普遍的。それは儚さだ。消えてなく…

山野 一「四丁目の夕日」

四丁目の夕日 (扶桑社コミックス) 作者:山野 一 出版社/メーカー: 扶桑社 発売日: 2015/01/17 メディア: Kindle版 トラウマ漫画として有名な作品。貧しいながらもみんなで力を合わせて精一杯生きている町工場の一家。それがある日を境にコロコロと坂を転げ落…

山田風太郎「柳生忍法帖(上下)」

柳生忍法帖 上 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫) 作者:山田 風太郎 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2012/03/24 メディア: 文庫 柳生忍法帖 下 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫) 作者:山田 風太郎 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 201…

三方行成「流れよわが涙、と孔明は言った」

流れよわが涙、と孔明は言った (ハヤカワ文庫JA) 作者:三方 行成 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/04/18 メディア: 文庫 日本のSFの若い書き手の勢いが素晴らしくて、いま一生懸命追おうとしてるんだけど、そんな注目株の一人三方行成くんの第二短…

フェルナンド・イワサキ「ペルーの異端審問」

ペルーの異端審問 作者:フェルナンド イワサキ 出版社/メーカー: 新評論 発売日: 2016/07/29 メディア: 単行本 本書で取り上げられているのは、すべて史実なのであります。十七の短編(掌編?)として描かれるのは、すべて性にまつわる事件。異端審問って暗…

小島美羽「時が止まった部屋:遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし」

孤独死の現場の惨状を平常に戻す特殊清掃と遺品整理を生業にする著者(二十七歳の女性である)が、写真では生々しいし、話や文章だけではリアルさが伝わらないしということで制作した現場のミニチュア作品と共に自分が見てきた現状を伝える良書である。 まず…

「中国怪談集」

中国怪談集 (河出文庫) 作者: 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2019/03/09 メディア: 文庫 河出文庫からこの国名を冠した怪談集が出ていたのは知っていた。日本はもとより、イギリス、アメリカ、ロシア、ラテンアメリカそして中国。以前刊行されてい…

トマス・ハリス「カリ・モーラ」

カリ・モーラ (新潮文庫) 作者:トマス ハリス 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/07/26 メディア: 文庫 実は「ハンニバル・ライジング」読んでないんだよね。本書は全く別物だからどうでもいいんだけどね。 カリ・モーラとは、本書の主人公の名前。凄惨…

ジョージ・R・R・マーティン「ナイトフライヤー」

ナイトフライヤー (ハヤカワ文庫SF) 作者:ジョージ・R・R・マーティン 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/05/02 メディア: 文庫 ここに収録されている六編の中、短編はみなかなり以前に書かれたものなのである。タイトルは以下のとおり。 「ナイトフラ…

王谷昌「どうせカラダが目当てでしょ」

どうせカラダが目当てでしょ 作者:王谷晶 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2019/07/23 メディア: 単行本 差別するつもりはないが、やはり女性というものは多くの目に晒され、ほぼ例外なく一般化された観念の呪縛にとらわれる存在なのだと思う。男のぼ…

フェルディナント・フォン・シーラッハ「刑罰」

刑罰 作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2019/06/12 メディア: 単行本 シーラッハの短編作品は、独特の間と感覚で完結する。彼の作品を読んだことのない人に向けて説明すると、少々困難をともなう気もするが、…

ハーラン・エリスン「愛なんてセックスの書き間違い」

愛なんてセックスの書き間違い (未来の文学) 作者:ハーラン・エリスン 出版社/メーカー: 国書刊行会 発売日: 2019/05/25 メディア: 単行本 ここんとこ続いているエリスン本の刊行は、ほんと目覚ましいものがあるよね。関連本としてすごく驚いたのが「危険な…

平山夢明「あむんぜん」

「あむんぜん」て!なんのこっちゃ、まったく!この感性が素晴らしいよね。独立独歩、唯一無二っつーの?誰も真似できないっちゅーの。 で、とりあえず収録作なのね。 「GangBang The Chimpanzee」 「あむんぜん」 「千々石ミゲルと殺…