読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

伊東潤「戦国鬼譚 惨」

武田家の滅亡を描く短編集。五編収録。ここらへんは、まったく疎くて、その過程はよく知らなかった。ま、信玄が病に斃れ、最終的には信長に滅亡に追いやられたってぐらいね。それぐらいの素地しかなくても、ここに収録されている各編はおもしろかった。奇を…

王谷晶「完璧じゃない、あたしたち」

これ、いいっすよ。おすすめっすよ。まったくノーマークの作者だけど、なんか本屋で見かけたときビビット感があったんだよね。で、とにかく買って読んでみたってわけ。 本書にはニ十三の短編(掌編?うち一編は戯曲)が収録されている。さまざまなシチュエー…

綿矢りさ「憤死」

四編収録。巻頭の「おとな」はとても短い作品。ここで語られる奇妙な出来事は、おそらく綿矢りさの実体験なのでは?それにしても、最後の『ねえ、おぼえていますよ。ほかのどんなことは忘れても、おぼえていますよ。』という部分で慄いた。奇妙な出来事の淫…

皆川博子「絵小説」

皆川女史が好きな詩の一節を宇野亞喜良氏に送り、それを元に絵を描いてもらい、その絵と詩からインスパイアされた話を皆川さんが書くという過程を経て本書の連作は成り立っている。収録作は以下のとおり。 「赤い蝋燭と・・・・・・」(『幻冬抄』木水彌三郎…

月村了衛「コルトM1851残月」

廻船問屋の番頭でありながら、コルトM1851を懐に、江戸の裏金融を陰で操る男、残月の郎次。彼は番頭という姿と札差 祝屋の仕事人の二つの姿をもち、誰からも一目置かれる存在だった。 本書の幕開けは、その残月の郎次が祝屋に敵対する親分と取巻きをコ…