読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧

福永信「一一一一一」

対話なのだ。二人の人物がいて、話している。それはとてもありふれた風景だ。本書に収録されている六つの短編はすべてそのパターンを踏襲している。そして語られる内容は推測と導きによって進められてゆく。そうなんだね?そうだろう?そうではないか?こう…

ヴィンシュルス「ピノキオ」

以前にもBD(バンド・デシネ)の作品を何作か紹介した。国書刊行会から出てたクリストフ・シャブテ「ひとりぼっち」、エマニュエル・ギベール「アランの戦争」、パスカル・ラバテ「イビクス」などなどである。フランスの漫画など読んだことがなかったので…

スティーヴ・ハミルトン「解錠師」

幼い頃に悲惨な体験をして、そのことが原因で一言もしゃべれなくなってしまった少年マイクル。彼にはどんな錠前でも開けてしまう特殊な技能と、物事をしっかり記憶してそれを描写する才能があった。高校生になった彼はあることがきっかけで裏の世界とかかわ…

十の嘘とアデュー・モナムール

田中くんの家には古いタンスがあって、その中にはおばあさんのミイラが折りたたまれて収納されている。ぼくはよくそのミイラを見に行く。本当は気持ち悪いと思っているのだが、なぜかたまに見たくなるのだ。ともだちの田中くんは目の大きな女の子みたいな顔…

舞城王太郎「NECK」

これ2010年、夏の「NECK」の映画公開にあわせて刊行されていたのだが、読もう読もうと思いながらいままで読まずにきた。なぜなら本書に収録されている4編の話のうち3編がシナリオ形式で書かれていたからなのだ。それだけでちょっと億劫な気持ちに…

『啓示』

お互いの箸で大きめの肉団子を食べさせあっている双子のそばを通って、緑色に透きとおった橋を渡ると、犬ふぐりという町だった。 おれは町のはずれに立って、陽のあたる大きなメインストリートを眺めやった。そこには雑多な店々が並んでおり、奇妙な匂いもあ…

景山民夫「虎口からの脱出」

本書は景山氏があの有名なトンプスンの「A-10奪還チーム出動せよ」に触発されて書き下ろした冒険小説である。大元であるトンプスンの本は未読なのだが、カーチェイスが目玉の冒険小説だということぐらいは知っていた。だから本書もカーチェイスがメイン…

キアラン・カーソン「トーイン クアルンゲの牛捕り」

本書を読んで、まず驚くのはその自由自在な発想だ。もう人間の想像力の限界をとび越えてしまっているかのような予想もつかない展開や描写に圧倒されてしまう。本書の主人公は古代アイルランドの伝説の中で一番有名な英雄クー・フリンなのだが、この十七歳の…

古本購入記  2012年 1月

BSのFOXチャンネルで金曜の夜9時から「ウォーキング・デッド」というドラマをやっている。明日で第4話なのだが、これがもう素晴らしくよく出来たゾンビ物なのだ。もともとこれはアメコミが原作でそれの翻訳版も風間賢二氏の訳で飛鳥新社から刊行され…