読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

窪美澄「ふがいない僕は空を見た」

日向蓬、豊島ミホ、宮木あや子と同じく本書の作者 窪美澄も「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞している。この「女による女のためのR-18文学賞」ってのは、最初、官能小説を女性が書くための賞なのかと軽く見ていたのだが、どうしてどうして…

スティーヴン・キング「アンダー・ザ・ドーム(上下)」

まず、本書の分量をここで再確認しておこう。上下二段組で上下巻合わせて1400ページ。長さ的には「ザ・スタンド」、「IT」に次いで三番目に長い長編なのだそうだ。 ぼくがこれを読み始めたのがゲラの届いた4月5日。そして読了が発売日である4月27…

アンダー・ザ・ドームがやってきた!

つい先日、キングの最新刊「アンダー・ザ・ドーム」のゲラ読みの件を記事にしたばかりなのだが、とうとう明日4月27日が、そのキング最新刊の発売日となった。 ほんと待望の日でもあり、実物を手にする日をこれほど首を長くして待ったのはあの「IT」以来…

続・短編小説の愉楽

前回短編の魅力について語った。いつものクセで長々と書いてしまい、書き洩れてしまった作家や作品があったので、仕切り直しなのである。 というわけで、今回は早速紹介していきたいと思う。まずは、アイルランドが誇る世界最高レベルの短編職人ウィリアム・…

中山七里「連続殺人鬼カエル男」

このタイトルと表紙からわりとコミカルな雰囲気なのかと勝手に想像しながら読みはじめたのだが、これがこころよく裏切られるから、おもしろい。 ここ最近、本書ほど読みはじめる前と読み終えたあとのギャップが激しい本を読んだことはなかった。 この中山七…

ジムノペティ

月が見えているが、それは怪我をした月だった。ぼくはトイレで用を足しながら、窓からその血まみれの月をぼんやり見ていた。妻は白目を向きながら熟睡しており、邪まな意識が常に背後を流れていた。 昨日薬局で買った居直り薬はフルヘインとサボカトルの混合…

短編小説の愉楽

短編集が結構好きなのである。短いストーリーの中で発揮される鮮烈な悦び。それはストーリー自体のおもしろさでもあり、短い中での構成の巧みさでもあり、切り取られたシーンの印象深さでもあったりするのだが、とにかく短編にはコンパクトな中に凝縮された…

2011年4月10日、日曜、桜の下、ぼんぼん、幕末の志士

今日は昼前くらいに、ぼんぼんと一緒に選挙に行ってきました。 あたたかくて、とても気持ちのいい日曜のひととき。二人で手を繋いで選挙に行ったあと、そのまま川べりに降りていって、ちょっとした散歩を楽しみました。 折りしも桜が満開で、お昼時と重なっ…

明るすぎて何も見えない過去

確かここは幼少のころ一度訪れたことがあったのではないかと一生懸命思い出してみる。フラッシュバック。泣いてる自分、若い母の笑顔、土と潮の匂い、大きな岩、血のついたティッシュ。 断片が絡まりあい、一つの大きなうねりになりそうでならないもどかしさ…

ついに、届いたサプライズ。

先週末から告げてたことなのだが、キングの最新刊についてサプライズがあったのである。これもみなツイッターのおかげなのだが、ぼくがツイッターを始めた当初からお互いフォローしあってる方がいて、その人は文藝春秋の編集者であり、キングやディーバーや…

皆川博子「死の泉」

文庫本で644ページ、重量級の長編ミステリである。 舞台は第二次大戦下のドイツ。ナチスの政策で設立されたレーベンス・ボルン【生命の泉】という組織の運営するホーホラント産院にいる妊婦マルガレーテの独白で物語は幕を開ける。この組織はアーリア人種…

古本購入記  2011年 3月

このところ、ようやく本の購入欲にブレーキがかかるようになってきた。というか、もう自分が必要とす る過去に刊行された本は蒐集しつくしたようなのだ。まだまだ未知の作家や見逃している作品はあるのか もしれないが、自分の知ってる範囲内での蒐集品は一…

高野和明「ジェノサイド」

本書も角川書店の読者モニターで当選して読んだ本である。これで角川のモニターをするのは三度目だ。 本書は、長大で尚且つ一言で説明できない複雑な展開を見せる本なのだが、それをぼくなりに一応説明しようと思う。だが、リーダビリティは素晴らしいので、…