読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

乾ルカ「メグル」

五編の短編が収録されているのだが、連作となっていてそれぞれが大学の奨学係の女性職員が斡旋するアルバイトを巡る話となっている。まず、この女性事務員が謎めいた存在なのだ。彫りの深い整った顔立ちなのにも関わらず、常に無表情で無機質な印象を与える…

皆川博子「水底の祭り」

久しぶりの皆川博子である。昨年の10月以来だ。本書は著者の第二短編集だそうで、ぼくが読んだのは文春文庫版なのだが、いまでは絶版のようである。でも、安くで出回っているようなので比較的手に入りやすい本のようだ。本書に収録されている作品は以下の…

ジェイン・オースティン&セス・グレアム・スミス「高慢と偏見とゾンビ」

というわけで、とうとう読んでしまった。 なんとも、これは奇妙なキワモノ本なのだ。でもそれが読了してみれば、至極当たり前に本編に忠実な仕上がりとなっていることに驚く。いや、これは本編よりも心情的に理解しやすくなっているともいえるのではないだろ…

ハイル、総統、ぼくたちに愛の手を!

フフフと笑った顔は不敵そのもの。緑色の光の中でその顔は醜くゆがんで見えた。 ぼくは驚いて思わず帽子をかぶりなおした。 「ハインリッヒ、それはきみの本心なのか?」 問いかけるぼくを無視して、ハインリッヒは前に向きなおり颯爽と馬をすすめた。シュヴ…

生ける屍考

いま「高慢と偏見とゾンビ」を読んでいるからではないのだが、ここのところゾンビ関係の作品がいろいろ目につくようになってきたので、ちょっとそのことについて書いてみようとおもう。 もともとぼくは世にいう『ゾンビ』物についてトラウマのようなものをも…

帝雲との会話

修行に出てから六日目のことだった。いつものごとく片腕のサージメント・スポイルを調整していた帝雲が何気なく言った一言におれはおもわずふかしていた萬キセルを取り落としそうになった。 なんだって?お前、それ本当か?」 ブラスドライブを全開にして回…

北原尚彦「首吊少女亭」

この本は『ふしぎ文学館』の頃から少し興味を持っていたのだが、今回文庫になったのということで読んでみた。作者の北原氏は生粋のシャーロキアンだそうで、本書に収められている12の短編のうち表題作以外は、すべてホームズの活躍したヴィクトリア朝を舞…

月村了衛「機龍警察」

パワード・スーツを着た警察のお話。しかし、本書はそれだけを売り物にした単なるロボット戦闘物の凡百作品とはまったく違った読後感をもたらす。 近接戦闘兵器体系・機甲兵装。通称キモノと呼ばれるその兵器は、身の丈3.5メートルあまりの二足歩行型軍用…

古本購入記  2010年3月

いつまでたっても控えることができない古本買い。どうしたものだろう?もう本当にやめた方がいいのに またフラフラと店に入って、じっくりゆっくり吟味し、いそいそとレジに向ってしまうのである。 そんなこんなで、今月も30作品32冊の本を購入してしま…