読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

初野晴「1/2の騎士~ harujion~」

この人とのファースト・コンタクトは図書館で目にした「漆黒の王子」という本だった。ただそのタイトルのニュアンスだけで、おもしろそうなのかな?と興味はもったが、結局読むことはなかった。次に目にしたのは本屋でみた「退出ゲーム」という本。本の表紙…

津原泰水「綺譚集」

この人の本を読むのは初めてである。10年ほど前に「妖都」で一般向けデビューしたときに、綾辻行人や小野不由美や菊地秀行らからの絶賛がオビに書かれていて目を引いたのだが、触れることなくいままできた。途中「ペニス」なるなんとも大胆なタイトルの本…

セルビアの二人

教会に行ったまま帰らない君 嘘なんかついてないのに いつもぼくの先回りをして 手足を拘束してしまう アリガトウという言葉が出ないのは そう思ってないからじゃない 恥ずかしいんだよ なんだか電車の中でお年寄りに席を譲るときみたいに とても面映くなっ…

ぼくのビートルズ

ビートルズの楽曲で何が一番好きか?なんていう番組を随分昔に観た憶えがある。確かベストテン形式 で、大々的にアンケートをとってベスト50か100を発表していってたはずだ。そして、それぞれの曲 を日本のアーティストが歌っていたようにおもう。 この…

角川書店編「ドッペルゲンガー奇譚集―死を招く影」

ドッペルゲンガーといえば、自分の分身を自分もしくは他人が見てしまうという現象だ。昔から、自分自身を見てしまった人には死が訪れるといわれているが、本書ではこの現象を題材にした短編が10編収録されている。このテーマは古今東西の作家を刺激する恰…

伊藤計劃「虐殺器官」

無残に横たわる無数の死体が描かれた表紙と、タイトルの不穏な響きで本書で描かれる世界がとても不気味で惨たらしいものだと思ってしまうが、決してそんなことはない。 本書で描かれるのはスタイリッシュでクールなプロフェッショナルの世界。堅牢に構築され…

ジョー・ヒル「20世紀の幽霊たち」

話題の書をようやく読み終えた。なんせ車中本で読んだものだから一ヶ月以上かかってしまった。しかしこの分厚い本をこの期間で読み切ったというところに本書の凄みがあるといえるだろう。だってあなた670ページですぜ。平日の仕事の合間の車で移動する時…

「連続殺人鬼の世界」

容疑者の住いは、狭い裏通りに面した二階建ての細長い家だった。呼び鈴を鳴らしても返事があるわけでなく、家の中は静まりかえっていた。ぼくは殊更強くドアを叩いて、声を張り上げた。 「北村!いるのか!警察だ!いるのなら、ドアを開けて出てこい!」 だ…

角田光代「森に眠る魚」

「本が好き!」の献本である。 最近の角田さんは、本書のようなちょっとクライムノベルっぽい作品を書いているので、気になっていたのである。「八日目の蝉」を読みたいなと思いながら、ついつい先延ばしにしているうちに本書が献本で出てたので応募してみた…

ピエール・ド・マンディアルグ「城の中のイギリス人」

ずっと以前にフランスの作家には怪物が多いなんて話をしたことがあるが、このマンディアルグもとんでもない怪物なのである。そんな彼の問題作がこのたび復刊されたので、簡単に紹介しておこうと思う。本書は訳者である澁澤龍彦をして『エロティシズム文学の…

古本購入記 2009年2月度

今月は、ほんとうに少なかった。ほとんど古本屋に行ってないのだから、当たり前だ。なぜだかわからな いが、あまり行く気がしなかったのである。こういうこともあるんだなぁ。 そんな中で購入した古本は以下のとおり。 「ドッペルゲンガー奇譚集 死を招く影…